〇 古代の聖域の花飾りか 豊橋の「賀茂しょうぶ園」

―― 「しょうぶ園 賀茂の丘への 花飾り」

 「賀茂しょうぶ園」は、愛知県豊橋市の中心部からかなり離れた北部の、もう新城市や豊川市の方が近い石巻地区の賀茂町にある賀茂神社の参道入り口一帯を、市の観光開発事業として1970年(昭和45年)に整備・開設された花ショウブを中心とした大規模な庭園だ。

 5月の下旬、そろそろ花ショウブが見頃との報を聞き、わたしの属する地域の写真クラブの仲間とともに初めて撮影に訪れた。

 花ショウブは、水はけの良い原野に生い茂るアヤメから園芸種として改良されてきた豪華な美しい花で、湿り気のある土地を好み、花びらの付け根が黄色く色づいているのが特徴で、古くから梅雨の風物詩として日本人に愛されてきた。

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 天平元年(729年)に、山城国の賀茂別雷神社を勧請して創建されたといわれる賀茂神社の参道入り口には、水路を跨ぐ赤い太鼓橋が架かっており、その向こうに広大なしょうぶ園が広がっている。

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 赤く塗られた太鼓橋は印象的で、このしょうぶ園の一つのモニュメントともなっているようだ。

 敷地面積9,900m2という広大なしょうぶ園には、江戸系、伊勢系、肥後系と呼ばれる3系統の300種の花ショウブ、3万7,000株が植えられており、毎年5月下旬から6月中旬の開花時には「花しょうぶまつり」が開催され、夜間にはライトアップも行われて観光客で賑わう。

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 特に、江戸時代後期から武士による園芸品種としての改良が進み、変化に富み多彩な「江戸系」と呼ばれる花ショウブが有名だ。
 このショウブは、白と紫の網目のコントラストが鮮やかで美しい。

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 弁が垂れ、はかなげな雰囲気をもつのが特徴の「伊勢系」の花ショウブ。
 外花被が3枚で三英花とも呼ばれる。

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 近くに流れる間川からの導水だろうか、水門を備えた立派な水路が整備されている。

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 「芯」と呼ばれる立派な雌しべが立った、花ショウブ。
 この芯が花弁とマッチして立つことで、花全体の姿を美しく際立たせる。

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 園内は整然と区画され、ショウブの造園面積は3,700m2に上る。

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 熊本で武士階級の手で改良が進められた、ボリューム感のある豪華な花が特徴の「肥後系」と呼ばれる花ショウブ『新玄海』。

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 開花した花ショウブの花期は、わずか三日間と短命で、その短い間に刻々と変化するはかない花の美しさを愛でるものとされる。

 株は次々と花を咲かせるが、このときは、まだ園全体では3分咲きとのことだった。

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 園内の池で栽培されている、6月から11月にかけて花を咲かせる水生多年草の「ヒツジグサ」

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 水路脇に連続して植えられた、アジサイも咲き始めていた。

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 しょうぶ園の背後には、賀茂神社のある丘陵地の森が広がる。

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 しょうぶ園を抜けると、高低差の大きい丘陵地を上がる森の中の長い参道が続き、その先に1200年以上の歴史を刻む賀茂神社の本殿が鎮座する。

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 賀茂神社境内の神山古墳(円墳)
 長い参道の途中の木々の間には、古墳時代後期(6世紀頃)のものと見られる直径28m、高さ3.5mの県内有数の円墳の神山古墳が、ほぼ完全な形で残されており、未調査のために詳細は不明であるものの、市の指定史跡とされている。

 このほか、この丘陵地には、かつては弁天塚古墳(前方後円墳)や行者山古墳、照山古墳、小照山古墳などといった、この地域を支配した古代の豪族の墳墓がいくつか点在し古墳群を形成していたものとみられ、そうした古代の聖域であったからこそ、何らかの霊験灼然を感ずるこの賀茂の丘陵上に、後の時代になって賀茂神社が鎮座されたものと考えられる。

 そのように考えてみると、この「賀茂しょうぶ園」は、賀茂神社のみならず、古代の聖域である賀茂の丘陵に、ショウブの花を供えて飾るための役割も果たしているのではないかとさえ、わたしには思えてくるのだ。

―― 「しょうぶ園 賀茂の丘への 花飾り」

20180525 豊橋 賀茂神社しょうぶ園

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 平成30年度花しょうぶまつりは、6月10日(日曜日)まで。
 (日没から午後9時00分までライトアップ)

 『賀茂しょうぶ園』
 豊橋市賀茂町字鎌田地内
 入場及び駐車場 無料
 花しょうぶまつり期間は、JR豊橋駅からから臨時直行バスが運行(所要時間:約40分)
 東名高速道路・豊川ICから、所要時間10分







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