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〇 今日の一献 スペイン風といわれる塔のある 静岡市役所の旧本庁舎

―― 「あおい塔」と呼ばれる静岡のシンボル

 静岡の3城めぐりで駿府城へ行ったついでに、静岡市役所の旧本庁舎に寄って来た。

 静岡市は、2005年(平成17年)4月に、清水市と合併して、政令指定都市に移行した人口71万人の都市で、静岡県の県庁がある県都でもある。 

 その旧本庁舎は、東京帝国大学建築学科卒業で、中国大陸や県下の建築設計に活躍し円熟期にあった地元浜松生まれの中村與資平(1880~1963年)の設計により、当初の経費予算50万円で1934年(昭和9年)に竣工した、当時としては非常に珍しいスペイン風といわれる塔屋を備えた建物だ。

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 静岡県庁東別館の20階の展望階から見下ろした、静岡市役所旧本庁舎
 
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 この建物は、駿府城の外堀旧大手門前の面積24,304㎡の土地に、鉄筋コンクリート造4階・地下1階(高さ40m)、延べ床面積47,563㎡で建てられ、ビルの上の塔屋には望楼が置かれ、塔頂にはドーム型の屋根が載っている。
  
 2005年の指定都市への移行に伴い、ほとんどの市役所機能と葵区役所が左に見える新庁舎に移転・新設し、現在は市議会議事堂と一部の市役所機能だけが置かれ、1階部分は市民ギャラリーとしても利用されている。

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 この建物を特徴付けているのは、なんといってもこの塔だ。
 4階建て建物の中央南端に、台座として2層の塔屋が立ち上がり、その上にテラコッタで装飾されたロマネスク風の柱とアーチ型の窓を備えた望楼の第3層があり、塔頂には緑と青のタイルで星形やジグザグ模様に装飾されたスペイン風といわれるドーム型の屋根が載せられている。

 第3層の望楼の床には、ライトアップのための投光器が設置されているのが見えるが、ほかにこの床には、国の国土地理院が置いた基準点の四等三角点が設置されているというが、建物施設内のそれも塔屋に設置されているのは極めて珍しいことだ。

 現在は節電で行われていないライトアップがされていたころには、夜になるとこのモザイクタイル張りのドーム屋根が青く浮かび上がり、家康の紋所の「葵」も連想させることから、「あおい塔」とも呼ばれるようになったという。

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 現在、市役所では設計者の意図を汲んで、このドームの意匠を「スペイン風ドーム」と呼んでいるようだが、わたしにはそうには見えず、むしろこの幾何学模様のモザイクタイル張りのドームのデザインは、どうしてもイスラム風のモスク屋根に見えるのだ。

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 また、外観の全体には明るい象牙色のタイルが使われ、テラコッタで装飾された丸窓やアーチ窓が設けられており、とかく重厚となる西洋風の建物に明るさと軽快な印象を与えている。

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 正面玄関と車寄せ

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 玄関扉

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 玄関ホール
 玄関の壁や階段には、明るい色彩で多孔質の天然大理石の一種、トラバーチンが多用されている。

 天井は玄関車寄せから奥に向かって緩いカーブを描いている。

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 漆喰で亀甲の装飾模様が施された天井部分。

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 玄関車寄せホール
 
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 玄関ホール内部
 床には、磨き上げた赤や灰色の大理石で色分けられた、花模様が描かれている。

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 正面階段の先には、明り取りを兼ねた華やかな踊り場のステンドグラスが設置されている。
 
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 正面階段の踊り場のステンドグラス
 現在このステンドグラスの中央には、庁舎の裏庭への出入口ドアが設けられている。

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 本館の案内板

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 2階の市議会議場への入口。

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 ホール天井には、「たちあおい」だろうか、花を模したシャンデリアが付けられている。
 廊下の向こうは、市民ギャラリーとなっている。

静岡市役所本庁舎 古葉書

 竣工間もない静岡市役所の絵葉書
 駿府城の三の丸石垣の上から撮影されたものとみられ、右に警察署の建物がある。市役所前、外堀に沿って路面電車の線路も見える。

 ところで、県庁所在地の市役所で、戦前に建築された市庁舎が現存するのは、この静岡市と名古屋、京都、鹿児島の4市だけといわれる。

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 竣工時の市議会議場、市長室、議長室

静岡市役所本庁舎07 古葉書

 竣工時の市庁舎の一階平面図
 南面する駿府城に対しているため、北が正面玄関で、L字形の建物になっている。

静岡市役所本庁舎08 古葉書

 竣工時の市庁舎の四階・塔屋平面図

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 建物は、平成元年に改修がおこなわれ、平成9年には国の有形文化財に登録された。
 左は地上17階建て(82.35m)で1987年(昭和62年)7月に竣工した市役所新庁舎で、葵区役所も入所している。

 この建物が竣工した年には満州帝国が建設されるなど、日本が中国大陸への侵攻をさらに強めつつあったときだったが、当時はまだ大正ロマンの残照も残るよき時代とはいえ、このようなエキゾチックで軽快な風変わりともいえる建物が建てられたのは、持ち前の性格の明るさと積極性に富む駿河人気質が、この場合も強く働いたからだったろうかと思うと興味深い。


 なお、旧本庁舎を見学したい向きは、一階に事務所のある管財課に電話予約すれば塔屋を含めて見学の案内をしてもらえるそうで、時間があれば静岡観光の穴場として是非訪れてみたいところだ。


○ 駿府城三の丸に建つ 帝冠様式の静岡県本庁舎

 静岡市役所の明るく軽快な建物に比べ、駿府城の南の三の丸にあり、荘厳で重厚な雰囲気を持つのが静岡県庁の本館だ。

 この庁舎は、懸賞設計に当選した兵庫県出身の泰井武の設計図案に基づき、県営繕課の大村巳代治らの実施設計により1937年(昭和12年)に竣工した。
 建物の規模は、鉄筋コンクリート造4階、一部5階建の瓦葺で、建築面積3,994㎡、延床面積15,477㎡となっている。

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 建物を上から見ると、「日」の字型の配置となっており、シンメトリーなファサードで、中央玄関の車寄せや本体のパラペット部には瓦が付き、中央に立ち上がった5階部分の赤い瓦屋根を、五重塔をイメージした方形造の和風屋根にするなど、当時流行した帝冠式といわれる典型的な官庁建築物で、国の登録文化財となっている。

静岡県庁懸賞当選案の図

 泰井武が応募した、県庁の新築懸賞設計当選図案の立面図
 (静岡県庁舎改築工事写真帖から 静岡県立中央図書館蔵)
 当選案の立面図を見ると、中央6階部分の塔屋の瓦屋根の意匠などは、現在の建物よりも五重塔が強くイメージされており、また中央玄関の車寄せの上部に面をそろえて突き出していた原案は、実施設計の段階で後退し、階数も5階に抑えられたのだろうと思われる。

静岡県庁懸賞当選案の図1-2階

 県庁の新築懸賞設計当選図案の1・2階平面図
 (静岡県庁舎改築工事写真帖から 静岡県立中央図書館蔵)
 上から見た建物の配置は、明かり採りの中庭を持つ「日」の字型となっている。

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 基本設計の意匠原案から、突き出し部分の玄関車寄せ上部の変更に伴う塔屋の位置の後退と、あわせて階数を5階に抑えたことにより方形造の赤瓦屋根の塔屋の主張も弱まり、建物全体の印象は極めて穏やかで地味なものとなってしまっている。

 なお、県庁舎本館の周りには、新しく東館、西館、別館が建てられており、1996年(平成8年)に竣工した最も高い別館は、地上21階建てで110.1mの高さがあり、20階にある展望階からは晴れていれば富士山も望める。



○ 静岡市のマンホールの蓋

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 家康の没後400年の昨年(2015年)、『大御所家康公顕彰400年』を記念して静岡市が設置した、消火栓のマンホールの蓋。

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 家康の家紋にちなみ、静岡市の花「タチアオイ」の白花をデザインしたカラー版の汚水管マンホールの蓋

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