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〇 今日の一献 アイレスフレックス Z型とオリンパス・ズイコーレンズ

―― AからZのイニシャル名のうちの(仮の)最初のカメラ

 前にも書いたけれど、二眼レフカメラは、我が国の戦後の一時期にカメラの一大ブームを巻き起こしたが、それらのカメラの名称をAからZまでのイニシャル順に並べたら、120種類もあったそうだ。(別表参照)

 以前には、その最後に位置するZENOBIA Frexを紹介したので、ここではその最初の栄誉を担うべきAで始まるイニシャルを持つカメラを紹介しようと考えて、この最初となるべきACCURA Frexや次のAMI Frexを時間をかけて探してみたが、どうしても手に入らない。
 だから割と入手し易かった3番目に位置するだろうと思われる、AIRES Frex(アイレスフレックス)を(仮の)最初のカメラとして、「その上、五十音順では正しく最初になるはずだ。」との詭弁をお許しいただきながら紹介する。
 
 ついでに、セールストークを駆使して誇らしく書かれていて興味深い、当時のアイレスの宣伝カタログが入手できたので、『』内で紹介しておく。

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 『魅力再発見・二眼レフ』
 写真工業8月号別冊(2006年7月)から


 このカメラは、その希少性で幻のカメラとさえ言われる35㎜判二眼レフ「ヤルーフレックス」を開発したヤルー光学(1949年設立)を前身として、1950年8月に設立されたアイレス写真機製作所(アイレス)が1951年9月に発売したアイレスフレックス Z型だ。

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 ブームで競争相手の多かった二眼レフの差別化を図るため、当初『世界に誇るレンズ界の王者』として定評のあった日本工学のニッコールQ.C. 75mmF3.5レンズを装着して発売された。

 レンズを供給した日本工学では、当時二眼レフの開発を社内で検討したものの結局発売することはなかったが、供給にあたって日本工学の製造基準を要求したことから、このカメラはローライコードⅢ型の近似モデルとして精度の高い高品質のカメラに仕上がっているという。

  『その精度、外観に最高の工作をもって製作されており、完成したカメラは厳密に一台ずつ細部まで検査を行ったうえ、皆様方に提供されております。』

 しかし、この頃はレンズの原料である硝材不足から、ニッコールレンズの供給が十分でなく滞ったこともあったことから、このZ型には他にオリンパスのズイコーレンズ付きと昭和光機製(後に合併)のコーラルレンズ付きとの3種類が発売された。
 
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 アイレスフレックスのカタログ(価格表)
 Z型に付けられたレンズによって値段が違った。
  ニッコールレンズ(3群4枚構成)付き 42,000円(1951年9月発売)
  ズイコーレンズ(3群4枚構成)付き 33,000円(1952年6月発売)
  コーラルレンズ(3群3枚構成)付き 30,000円(1952年7月発売)


 このうち、わたしのアイレスフレックスZ型にはズイコーレンズが付いている。


〇 レンズとシャッターの機構
 オリンパス・ズイコーF.C. 75mmF3.5レンズは、全面単層コーティングされたテッサータイプ(3群4枚構成)で、当時は国内レンズのうちでもその描写のシャープさで定評があった。

 『国産第一級レンズとして、オリンパス光学工業が自信を以て制作した三群四枚構成の優秀レンズ』

 しかし現在では、このレンズの宿命ともいえる経年変化によるコーティングの劣化により、多くのクラカメ使いが嘆く「ズイコー曇り」という白濁が発生し、人間の眼でいう白内障に陥っているものが多い。

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 このレンズも御多分に漏れず、第3群の第1レンズの表面に白濁が認められ、その上ビューレンズの焦点不調があったので、レンズを分解して酸化ケイ素で処理するとともにピント調節を行った。
 
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 シャッターは、セイコーシャのSEIKOSHA-RAPIDで、シンクロ接点はドイツ式接点。
 
 『精工舎が長い歴史と技術を以て完成した此界第一級のシャッター』

 速度は Bと1から1/500秒まであるから、現在も実用には十分だが、惜しむらくは、下級機のU型のコパルシャッターには付いていたセルフタイマーはない。
 絞りは、f3.5、4、5.6、8、11、16、22。

 機能が近似するとはいえ、ローライコードⅢとは異なるところは、シャッター速度と絞りの表示はレンズ周りのだるま型カバーの表面に、数字が刻まれているから選択は明快だ。
 また、撮影には、鏡筒の下にあるシャッターレリーズレバーでチャージしておいてから、別に本体表面の右下にあるレリーズボタンを押して行うから、カメラぶれ(シャッターぶれ)の発生は少ないと思う。

 このレリーズボタンがない本家ローライコードシリーズでは、シャッターレリーズレバーの往復でシャッターを切るが、カメラぶれを防ぐためには別売りだったアダプターを手に入れ、シャッターレリーズの穴に装着して使うことになる。

 『Z型は、フード、フイルター、アタッチメントの規格品を確実に着装できるように、バヨネット式装着となっています。』


〇 焦点調節とフィルムの装填・巻上げ機構
 ピント合わせは、ファインダーフードを開けて擦りガラスのレンジファインダーを覗きながら、右側にある焦点調節ダイヤルを回して鏡筒を前後に繰り出して行う。

 『ファインダーフードは片手開きで開閉し、且つ透明ファインダーが装着されております。』

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 ボディ右には焦点調節ダイヤルとフイルムの巻き上げダイヤル、カウンターがある。


 ファインダーはそっけない擦りガラスだが、折り畳まれたルーペをセットすれば、ルーペ周りの蓋がファインダーをカバーして外光を防ぐ工夫がされているからピント合わせは容易だが、このクラスの機種ではファインダーにもう少し工夫があってもよかったのではないだろうかと思う

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 ファインダーはそっけない擦りガラスだ。
 折り畳まれたルーペをセットすれば、ルーペ周りの蓋がファインダーをカバーして外光を防ぐ工夫がされている。


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 フィルム装填は容易だ。
 裏蓋の開閉は、カメラの底にある三脚穴のあるダイヤルに付いた金具を「O(開)」の矢印方向へスライドしてからロックを外して行う。ロックの場合には、「C(閉)」方向へスライドさせる。

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 『裏蓋止は二重にして、完全遮光と補強が図られています。裏蓋止装置もカム式により完全かつ堅牢です。』

 フィルムの巻き上げは、ボディの右の大型ノブを回して行う。
 フィルムは下から上へ移動するから、120ブローニーフィルムを下室内に装着し、フィルムの端を上に付けたフィルムの芯の巻取り溝に通して巻き取る。

 この時、フィルム室上部の奥にある歯車は、巻き取られていくフィルムに合わせて回転し、コマの移動量を検出してカウンターを進めながら自動停止する役割を果たしている。

 フィルムの装填後、まず最初に巻取りノブの中心にあるフィルム停止解除ボタンを押しながらフィルムを巻き進め、フィルム室のレールの両端にある赤点とフィルムの裏紙に描かれたスタートマークを合わせてから裏蓋を閉じる。次に、フィルム停止解除ボタンを押しながら、その脇にあるカウンター解除ボタンをスライドしてカウンターにスタートの「S」を出して解除しておく。

 その後、再度フィルム巻き進めれば、コマの移動量を検出してカウンターに1が表示されて巻取りが自動的に停止するから、従来機のような裏蓋に開けた赤窓は必要なくなって光線漏れの恐れがなくなり、速写性も高まった。(セミ・オートマット機構)

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 フィルム室のレールの両端には、スタートマークを示す赤点が刻まれている。
 ビディが、下位機のU型やYⅢ型と共用しているから、本来ならばこのカメラの価格からして、レンズ室の壁には、廉価版のリコーフレックスの後期型でも試みられた乱反射を防ぐ溝や、高級機に標準装備されていたバッフルがないのは残念だ。

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 『堅牢、精密なダイカスト・ボディーで、赤窓を有せずフィルムのリーダー・ペーパー上の三角点を利用する自動巻き取り装置を完成しています。』


アイレスフレックス 01-20160200


 ○ 本体のアクセサリー

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 このカメラの背には、英文で天候・季節・時間に合わせた簡易露出表のプレートが付けられている。

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 ピントフードには、アイレスカメラのロゴマークが付けられている。


○ 使用にむけての整備
 ところで、このカメラがわたしのところへやってきたとき、巷間評判の芳しくないズイコーレンズの例にもれず、このカメラの撮影レンズにも曇りが認められ、また前の所有者が何らかの分解調整を行ったからか、ビューレンズの焦点不調があった。

 これまで「ズイコー曇り」の悪評から避けてズイコーレンズの写りを体験したことがなかったわたしは、何とか使えないものかとシャッターのダルマカバーを外してレンズを分解して酸化ケイ素で研磨処理したが、幸いその曇りは軽いものだったから大きくオリジナルを毀損しなかったと思う。また、後ピンとなっていたビューレンズのピント調節も割と簡単に終えることができた。

 この記事の最後にこのカメラで撮影した画像を掲載したので、ご覧いただきたい。

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 前面プレートの貼皮を剥がしてシャッターのダルマカバーを外せば、上下のレンズやシャッターの分解整備の工程に迫れる。


〇 アイレスフレックスZ型の主な仕様

アイレスフレックス 02-20160200


〇 アイレスフレックスZ型の取扱説明書と宣伝広告
 
 「アイレスフレックスの使い方」
 アイレスフレックスZ型の取扱説明書の抜粋

資料 アイレスフレックス00

資料 アイレスフレックス01

資料 アイレスフレックス02

 アイレスフレックスZ型などの宣伝広告
 「正確な工作と測定によって生まれた!アイレスフレックス」
 1952年のアサヒカメラ誌上に掲載

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 アイレスフレックスの宣伝カタログの一部

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 アイレスフレックスの英文宣伝カタログの一部

00米国資料 アイレスフレックス00


〇 撮影例

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 ドーム内径35mで世界一の名古屋市科学館のプラネタリウム・ドーム
 Olympus Zuiko F.C. 75mm F3.5

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 名古屋市内の白川公園にある市立科学館
 Olympus Zuiko F.C. 75mm F3.5

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 名古屋市科学館のB6型蒸気機関車
 1904(明治37)年のドイツ・ハノーファー社製
 Olympus Zuiko F.C. 75mm F3.5

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 下町から見たJR名古屋駅方面
 Olympus Zuiko F.C. 75mm F3.5

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 ビル街に設置されたストリートアートの銅像
 Olympus Zuiko F.C. 75mm F3.5



 ところで、「ズイコー曇り」というのは、本来透明なはずのレンズが、磨りガラスのように白濁してしまうことだが、人間の眼の病気では白内障という。

 わたしが50歳代に入ったころ、日常もとみに眼の見え辛さを感じるようになり、掛けている近視メガネレンズの度を強く変えるなどしても改善することはなかった。
 あるとき、学生たちの前で話をする機会があったが、用意する原稿ノートの文字を24ポイントにしなければ判読できなくなって、ようやく眼科で受診した結果は、両眼ともに白内障との診断だった。

 ズイコ―レンズのようにコーティングの劣化だけであれば、今回のように表面を研磨すればよいけれど、老化などによる眼のレンズの白濁治療は、手術でレンズを交換することになる。

 かくしてレンズ交換の手術を受け、ついでに近視対応の多焦点眼内レンズにしたことで、おかげで中学校入学以来の長期にわたって使ってきたメガネが必要なくなり、その長年の煩わしさから見事に開放されることとなった。






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