〇 今日の一献 ミッキーマウスのニックネームで呼ばれるカメラ コダック シグネット35

―― 若い娘(こ)に「可愛らしい。」と言わせるカメラ

 20数年前、出張帰りの地方都市の駅前で、通りすがりに「可愛いカメラ。」と若い女性に言われたことがある。
それは、わたしの首から下げていた、コダック シグネット35(Kodak Signet35)だった。

 このカメラは、小さくても 44㎜の準広角で高性能のレンズを付けているから、ボディがアルミダイカストで少々重いもののスナップ撮影には最適だったから、当時は出かける時には良く持ち出して使ったものだった。
 「可愛い。」といわれて、その時は少々戸惑ったものだが、今ではこのカメラは「ミッキーマウス」と呼ばれて、カメラ好きの特に女性の間では人気のカメラであるという。

 軍艦部から本体、裏蓋まで、全てアルミダイキャスト製のボディの下半分を黒皮にまとい、前部の左右にある採光ブライトフレームとファインダ―フレームを「目」に見立てながら、シャッターと絞りの付いた飛び出たレンズ部分を「鼻」と見立てれば、あとは自ずと軍艦部の左右に並ぶフィルム巻上げと巻き戻しの二つの大きなダイヤルが、さしずめ「耳」に見えてきて、それはディズニー映画の人気者、ミッキーマウスの顔となるわけだ。

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 シグネット 35は、当時の世界のフィルムメーカーの巨人、米国コダック社が、フィルム販促の一環として1951年に販売を開始した、35mmフィルムを使うレンズカメラだ。

 大体においてカメラの優秀さは、戦前戦後を通じ一貫してドイツのメーカーが世界をリードしており、無骨なデザインの米国製カメラにはロクなものがないというのが、わたしの偏見だけれど、このカメラに限っては少し違うような気がしている。

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〇 レンズとシャッターの機構
 レンズは、単層コーティングされたテッサータイプの準広角44mmのエクター(Ektar)f3.5(3群4枚構成)が付いている。レンズの硝材に屈折率の性能を高めるために、今では使われない特殊薬品(放射線元素トリューム)が含まれている新種の光学ガラスと言われ、解像の切れ味は鋭く描写と発色・コントラストともに定評がある。
 
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 レンズ周りに刻まれたアルファベットは、コダック独自のレンズの製造年を示すシリアルナンバーで、「CAMEROSITY」のアルファベットを1から0の数字に当てはめた下二桁が製造年となる。
 だから、わたしのシグネット 35のレンズの表示が、「RE」だから「54」となり、1954年に製造されたエクターレンズだということになる。

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 シャッターは、コダック社独自のSYNCHRO-300で、シンクロ接点もコダック式接栓となっているから、普通のドイツ式接点のフラッシュなどを使うときには別にアダプターを付ける必要がある。
 速度は B、1/25、1/50、1/100、1/300秒だけで至って簡素だが、実用には十分だ。
 絞りは、f3.5、4、5.6、8、11、16、22。

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 撮影には、鏡筒の左上にある小さいノブを下げてシャッターチャージしておいてから、右側の大きなバーを下してシャッターを切る。

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 SYNCHRO-300シャッター部分の構成図解
 レンズ前群の鏡筒のネジを外せば、簡単にシャッターの蓋(リング)が取れてシャッター機構を露出できるが、本体を傾けるとパーツが落下することに注意を要する。
 

〇 焦点調節とフィルム巻上げ機構
 鏡筒の上には、左右に採光ブライトフレームとファインダ―フレームが同サイズでシンメトリーに置かれており、その間に可愛いKodakの赤マークがデザインされているのもご愛嬌で好感が持てる。
 ライカのレッドマークがずっと後のM6からだから、オリジナリティはこのカメラにある。
 ピント合わせは、一眼式の小さなレンジファインダーを覗きながら、鏡筒右下部にある焦点調節レバーをスライドして鏡筒を前後させて行う。

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 ファインダーは薄緑色だが明るく、フレーム中央に黄色の三角形のブライトフレームが浮かび上がっており、この二重像を重ねるピント合わせは容易だ。
  
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  裏蓋の開閉は、カメラ右サイドにあるボタンを押しなら金具をスライドしてロックを外して行う。
 軍艦部や裏蓋まで全身アルミダイキャスト製のカメラは珍しい。
 従って、ボディは堅牢で、実用カメラの重量は510gを越えるけれど、掌に包めるほどに小さいから、それは手に馴染む適度な重量で、カメラブレを起こすことはまずないと思う。

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 フィルム室は小さいが、フィルム装填は比較的に容易だ。
フィルムは左から右へ移動するから、35㎜フィルムのパトローネを左室内に装着し、フィルムの端を右の巻取りスプロケットに通して巻き取る。

 なお、フィルムレールの右下部にある画車は、フィルムのパーフォレーション(穴)に噛み合って、コマの移動量を検出するとともに、二重露出防止機構の役割も果たしている。

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 フィルムの巻き上げは、軍艦部の右の大型ノブを回して行う。
 軍艦部の中央ある逆算式フィルムカウンターを、矢印の方向に回して装填したフィルムのコマ数に合せる。
巻き戻しは、カメラの背の右下にある小さなノブを左に押して逆転ロックを解除しながら、軍艦部の左の大型ノブを矢印の方向に回しながらフィルムを巻き取る。

 
 ○ シグネット35の本体アクセサリー
 このカメラの背には、スライド式の簡易露出計が付いている。
 その当時発売されていたフィルムの種類(KodaChrome(ASA25)、Pan-X(50)、Plus-X(100)、Super-XX(200))に応じて、撮影時の天候や光の強弱、シャッタースピードと絞り値などを二つの金属プレートをスライドさせながら合わせて、最適な露出値を算出させるものだ。
 操作の仕方の詳しくは、添付のマニュアルを参照されたい。

0011P1220592のコピー

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○ シグネット35のアウトフィット
 わたしがこのカメラを手に入れたのは、米国イリノイ州の中国系アメリカ人業者からだったが、このカメラには人造皮製のギジットバックにフラッシュ、モノクロ用のフィルターセット、Westonのセレン式露出計、使用説明書などが付いていた。

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 バッグの内側には、女性のものとおぼしき名前のネームプレートが貼り付けられていたから、丁寧に使ってきた前の所有者は、きっと当時の妙齢の美しい?米国人女性であったに違いない。

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 ところで、もしシグネット35のメタルレンズキャップが失われても、コダックのフィルムケースの蓋で十分代用ができる。むしろ、この方が似合っているのかもしれない。

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 コダックカメラのシグネットシリーズの初代機となったシグネット35(1951-1958)は、米国内で95ドルの廉価版普及機として売り出された。
 その後、どのカメラも優秀なエクターレンズを付けたシリーズカメラとして、シグネット40(1956-1959:$65)、シグネット30(1957-1959:$55)、シグネット50(1957-1960:$82.50)へと続き、そしてレンズ交換ができるシグネット80(1958-1962:$129.50)で終了するが、そのデザインは、結局シグネット35を超えるものとはならなかった。

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〇 シグネット35の取扱説明書と宣伝広告

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 シグネット35の英語版の取扱説明書の一部

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 プレゼン用のシグネット35の宣伝広告
 また、当時の米国人の家庭の習慣では、ネガフィルムからプリントにしてアルバムを作るよりも、リバーサルフィルムで撮って、家族揃ってプロジェクターで投影して楽しむことが流行った。

Ad on back cover of Popular Photographer October, 1954

 コダックカラーフィルムの販促とシグネット35の宣伝広告
 初期のカラーフィルムの現像所は限られていたから、撮影後にはこうした専用の袋に入れてフィルムを送ったものだった。
 日本でも、富士カラーは初期の頃には、現像のために東京か大阪の専門の現像所に送ったものだ。たしか現像代と送料は、初めからフィルム代金に含まれていたと思う。



〇 撮影例

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 JR名古屋駅前
 
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 山茶花の花

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 JR名古屋駅高島屋のクリスマス飾り

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 愛知県豊橋市の路面電車

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 愛知県豊橋駅前の路面電車

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 愛知県豊橋市の公会堂




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