〇 今日の一献 羨ましかった気持ちが、忘れがたくて。 フジペット

―― 少年のあこがれのカメラ、フジペット(Fujipet)その2

 それで、このカメラで撮影してみた画像がこれだ。

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 ノリタケの森。
 カラーフイルムで撮影したが、このカメラは当時の標準フィルム、モノクロISO感度50を前提に設計されているようで、単玉固定焦点レンズのピントは、ポートレートや集合写真の大体3~5mの範囲が一番シャープのようだ。
 また、単玉レンズのため、画面四隅にやや周辺光量の低下が起こっている。
 FUJICOLOR Super G ISO100


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 同じネガフイルムのカラー情報を変換してモノクロームにすると、発色のでき不出来の余分な印象が排除されて、設計当時の予定されたパフォーマンスに近づく。
 なかなか良いではないか。


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 熱田神宮の拝殿
 裏蓋の咬合部分の光線対策が不完全でか、右下に光線漏れが発生している。


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 同じくモノクロームにした画像。
 現代のデジカメのようにメモリーの尽きるまで際限なく撮影することはできず、当時はカメラを使うということは、あらかじめフィルムの枚数を頭に叩き込んでおいて、いつも残枚数を気にしながらどの場面で撮影するのかをイメージしながら撮影する、頭を使う必要があった。


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 固定焦点レンズは、全ての距離に焦点が合焦するわけではない。
 だから、設計者は、そのカメラはどんなものを撮影する場面が多いだろうかを想定し、そのときにベストのパフオーマンスが発揮できるように設計するのだと思う。


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 こうしてさりげなくテーブルに置いて、眺めながらコーヒーを飲むのも一興だ。

 このカメラのように、シャッターが固定で露光速度を調整できないカメラでの撮影は、被写体の光量を的確に推測して、唯一可変の適正絞りを決定する能力が問われる。
 また、固定焦点でピント合わせが出来ないレンズは、絞りと被写界深度の関係を理解しないと意図した写真は撮れない。
 フジペットは、初心者向け低価格カメラであるといいながら、優れたかっこいいデザインで、写真を撮るための基本的知識を体得するには十分な、カメラの基本的な機能を備えていた。

・レンズ:70mm F11(単玉)
・シャッター:B、1/50sec、絞り:F16、F22
・シンクロ:X接点
・ファインダー:逆ガリレイ式、透視
・焦点調節:固定
・フィルム送り:ノブ巻き上げ、裏蓋赤窓確認式
・寸 法:120×100×75mm、重 量:332g
・発 売:1957(昭和32)年9月、価 格:1,950円
・フジペットのサイト:

   http://www.asahi-net.or.jp/~rd2h-ari/FU_PET.htm


 彼らが帰ってから、しばらくして、その時撮った何枚かのモノクロ写真がわたしの下へ送られてきた。(カラーフイルムが一般化し始めるのは、わたしが中学を卒業するころだ。)

 わたしもこのカメラの操作方法を教えてもらって、彼らのスナップを何枚か撮ったのだが、その時、このカメラの軽さや操作のシンプルさとかに驚いたのだけれど、こうしてプリントを受け取ってみると、その写りの良さに改めて驚いた記憶がある。

 実は、そのときわたしは我慢していたけれど、本当は、フジペットを所有し写真を撮る従兄弟が羨ましくて仕方がなかったのだ。
(昔の子供たちは、普通に状況を把握することに敏感で、常々親の経済状況を良く理解していたから、我慢することを知っていたのだと思う。)

 その羨ましかった気持ち、少年時代の憧れのカメラ、フジペットのことがいつまでも忘れがたくて、わたしは就職した後に、他にもっと優秀なカメラを使っていたにもかかわらず、探すのに苦労しながらかなりの時間をかけて発売当時の値段より数倍高いこの初代のフジペットを手に入れた。


〇 「いとこ」とは、自分からみて親の兄弟姉妹の子供である。4親等の傍系親族の一つ。
 漢字では年長の男性を従兄、年長の女性を従姉、年少の男性を従弟、年少の女性を従妹と書く。
また、これらを組み合わせて男同士を従兄弟、女同士を従姉妹、男女同士を従姉弟、従兄妹とも書く。ひっくるめると従兄弟姉妹と書く。
 また、父方のいとこは堂兄弟や堂姉妹、母方のいとこは表兄弟や表姉妹とも書く。民俗学や人類学ではイトコと書く。

・FUJIPET少年マガジン誌広告

・FUJIPETちらし中

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フジペット貯金箱裏面


〇 今日の一献 羨ましかった気持ちが、忘れがたくて。 フジペット

―― 少年のあこがれのカメラ、フジペット(Fujipet) その1

 わたしの古い写真アルバムの小学校6年生の頃の白黒の写真プリントの中に、野球帽をかぶって木のベンチに前を向いて緊張して座る、半ズボン姿のわたしが写っている一枚がある。
 隣には、帽子をかぶったワンピース姿の少女が、少し腰を傾けて足を投げ出してリラックスして座り、カメラのレンズに向かってほほ笑んでいる。

 これは、わたしの母の妹の子供、つまり従妹だ。

 わたしの母の妹、叔母は、関東に嫁いで私と同年の息子と三歳下の娘をもうけたが、今まで帰省することは稀で、この年の夏休みに子供たちを伴って実家に帰省したことから、わたしたち従兄弟姉妹同士は初めて会うことができたのだった。
 
 おかげで、彼らが居た5日間というもの、毎日わたし達は母と叔母との引率で、東山動植物園や名古屋城などの市内の観光施設などを路面電車やバスで訪ねて廻るという、楽しい夏休みとなった。

 この時、従兄弟の彼が持っていたカメラ(フジペット)で撮ってくれた写真が、その写真だった。
 
 わたしの生まれた昭和20年代(1940年後半)は、敗戦後の復興時期で衣・食・住が欠乏し、庶民の生活にはとうてい余裕のなかった時代だったが、それでも30年代(1950年代)に入ると、朝鮮戦争の特需を契機に、日本経済もようやく活況をきたし始め、カメラを手に入れて写真を撮るというゆとりも少しずつ出てきたころだった。

 このころ流行ったのが、プリントを引き伸ばさずに済むから経済的なブローニー判のモノクロフィルムによる撮影で、このブローニー判フィルムを使う蛇腹カメラや2眼レフカメラが、国内の様々なメーカーから発売されるようになっていた。

 従兄弟の彼が持っていたフジペットは、昭和32年(1957年)に、現在となっては国内唯一のフィルム生産メーカーである富士フィルムが、自社のフィルム販売の拡大を図る目的で、今までカメラを使ったことがない人、特に少年少女たちにでも簡単に撮れるというコンセプトで発売した、初心者向けブローニー判フィルムを使用するカメラだった。
 低価格で定価は1,950円というが、当時としてはそれは決して安い値段ではなかった。
 ボディカラーは、赤、青、緑、橙、黒の5色のカラーがあり、彼のフジペットは、確か緑だったと記憶している。

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 こうして車の座席に何気なさそうに置いてみても、そのシンプルでスマートなデザインは、とても50年以上も前のカメラとは思えないお洒落なカメラだ。

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 鏡胴の根元下の中央の絞り調整レバーで、露出を決める。絞り解放はF11、目盛りは他にF16とF22がある。ボディの上から見ると、鏡筒根元には絞りの目安となるお天気マークの赤丸、緑丸、青丸の表示があり、それを見ながらレバー操作をして絞りを決めることができる。
 ボディの上の大きな一つ目がファインダー。素通しではなく接眼レンズが内蔵されていて、画角を決めるだけのシンプルなファインダーだが見やすい。


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 太い鏡胴には、焦点距離75mm、F11の単玉固定焦点レンズが収まっている。レンズ下の赤いレバーは、1/50秒(I)とバルブ(B)だけのシンプルな露光速度切り替えレバーがあるだけ。

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 上から見て、鏡胴の付け根の両方にある三角のレバーは、左レバーでシャッターチャージしてから、右のレバーでシャッターを切る。
 レバーには、“1”と“2”の表示が付いているから、操作時の間違うことはない。
 カメラボディ上の左のダイヤルは、フィルム巻き上げダイヤル。ブローニー判フィルムは巻き戻しをしないので、ボディの背面の真ん中にある番号確認用の赤窓でフィルムの裏紙に印刷されている番号を見ながらフィルム送りをし、一コマづつ撮影しながら最後まで巻ききる。


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 隣のケースに入った初期型は、この赤窓をふさぐ蓋が付いている。もう一台の後期バージョンでは省略されている。
 カメラの進歩で自動巻き上げ機構付きが普通となり、現在発売されているブローニー判フィルムは、フイルムの裏紙も薄くなっているように思われるから、この赤窓でのフイルム送りは光線漏れの原因になるのではないかと私は心配する。
 ボディの上のファインダーの右に、ストロボを装着するアクセサリシューがある。鏡筒付け根の下部分に、シンクロX接点ストロボ端子がある。


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 ボディの底にある三脚穴部分と一体になったネジを回すと、ボディ後ろ側の裏蓋がはずれる。
 中央の穴が露光部分。絞り羽根は四角く、その先のシャッターはギロチン式の一枚羽根。右側にフィルムを入れ、左側へ巻き取る。単玉レンズによる湾曲像への対応として、フィルムアパーチャーを湾曲させているのが珍しい。


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 フジペットは、初心者向けのカメラだったが、通常は緑色のビニール製の小さなカメラバックが付いた。
 低価格カメラなのに、本格的な皮製のケースも用意されていたようで、このカメラには付いていた。


―― 少年のあこがれのカメラ、フジペット(Fujipet)その2に続く。




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