〇 今日の一献 35mm距離計連動式蛇腹カメラ フォクトレンダー ビトーⅢ

―― 高性能コンパクト35㎜カメラを目指したはずが、高級・重厚になってしまったカメラ

 フィルムメーカーの巨人コダックが1931年に発売した、装填が簡便なパトローネ入りの35mmフィルムを使うカメラとして、ドイツ・コダック社が開発したコンパクト蛇腹カメラ、レチナシリーズの成功に触発され、当時のドイツのカメラメーカー各社からも各種のコンパクト蛇腹カメラが発売された。

 その中でもビトーⅢ(VitoⅢ)は、カメラの老舗フォクトレンダー社が1939年に発売したビトーⅠを初号機とするビトーシリーズの最高級コンパクト蛇腹カメラとして、同社が開発したばかりの高性能レンズと連動距離計を初めて搭載して1951年に発売された。

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 ボディは、同社の中判カメラ ベッサⅡのように、軍艦部の操作パーツは左右対称に配置され、下に開く前蓋はかまぼこ型に曲線を描いて、全体のフォルムは丸みを帯びた女性の優雅なトルソをさえ想わせるデザインとなっている。


〇 レンズとシャッターの機構

 ボディの底にある解除ボタンを押して前蓋を開けると、油圧式でもないのに二本のレールに載ったレンズとシャッターが静々と引出されてきて、自動起立して組み上がる。

 この点、スーパーイコンタなどのようにバチンと勢い良く飛び出して組み上がらないところも、女性的で奥ゆかしい。

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 レンズは、フォクトレンダーのA.W.トロニエ博士によって1950年に開発されたばかりの、コーティングされた高性能 ウルトロン(Ultron)50mm f2.0が付いている。

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 ウルトロンレンズは、6種もの硝材を使った5群6枚構成の変形ガウスタイプレンズで、非点収差、像面湾曲、歪曲収差といった光学レンズの持つ課題を良く解決しており、初期にはレンズシャッター用に開発されたものだったが、以後発展して高級交換レンズなどに利用されていくことになる。

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 シャッターは、初期型のこのカメラにはコンパー・ラピッドシャッター(ドイツ式シンクロ接点)が装着されているが、セルフタイマーは付いていない。

 なお、ビトーⅢの後期型は、MXシンクロ接点を備えたシンクロ・コンパーとなる。
 シャッターにはレチナⅡaのように、フィルムの巻上げと同時にチャージするオートチャージ機構はないので、撮影前にはチャージする必要がある。

 速度ダイヤルは B、1、1/2、1/5、1/10、1/25、1/50、1/100、1/250、1/500秒。
 絞りは、f2、2.8、4、5.6、8、11、16まで。
 
 
〇 焦点調節とフィルム巻上げ機構
 ピント合わせは、一眼式のファインダーを覗きながら、軍艦部の左にある大きな焦点調節ノブを回してレンズを前後させながら行う。

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 ファインダーは明るいものの小さくブライトフレームは少し見づらいが、フレーム中央に浮かび上がった丸い二重像を重ねることでピント合わせを行う。

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 フィルムの巻き上げは、軍艦部右にある大きなノブを回して巻上げる。 
  
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 巻き戻しは、巻き上げノブとシャッターボタンの間にあるボタンを押して逆転ロックを解除しながら、左の焦点調節ノブの上にある巻き戻しレバーを立ててを回しながら巻き取る。
 
 巻き戻し後のフィルムは、巻き戻しレバーを引き上げて軸をはずしてパトローネを取り出す。

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 裏蓋の開閉は、左両隅にあるレバーを同時に押してロックを外して行う。
 35㎜フィルムのパトローネは左室内に装填し、フィルムは左から右へ移動し右にあるスプロケットで巻き取る。

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 裏蓋の内側に付いたフィルム押えは、脱落の恐れがないスマートな設計で、平面性の確保に工夫がされた圧板が設けられている。

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 カメラの速写ケースは、スマートなデザインの60年以上経過したとは思えない上質な皮で作られている。

 この時代の蛇腹カメラの特徴として、カメラを吊り下げるためのアイレットが付いていないことが多く、残念ながらこのカメラにも無いから、速写ケースは必須アイテムとなる。

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 ところで、なぜ「速写ケース」と呼ぶのか今まで不思議に思っていたが、考えてみれば、これまでの古典カメラのボディは大きく、木製や板金製だったことから、その携帯と保護のために吊紐の付いた皮ケースに入っており、撮影時にはこのケースから取り出して組み立てて使うのが普通だったから、カメラ本体にアイレットは必要なかったとみられる。
 (もっとも、取り出し用に片サイドに皮の取っ手が付いていたが、これは撮影時のカメラ保持用ではない。)

 そのうちに、カメラがコンパクト化して中判や小型になって速写性が高まってくると、いちいちケースから取り出すのが面倒となり、カメラの前蓋を開ければ撮影ができるケースが工夫され、これを「速写ケース」と呼ぶようになったのだろうと思われる。

 なお、時代がさらに下って、ボディの剛性が高まり、より速写性が求められるようになると、カメラ本体に吊環(アイレット)を直接取り付けて紐を通しボディを携帯する、現在普通に見る姿になる。

 
〇 ビトーⅢのアクセサリー

● ボディの底の高下駄
 ビトーⅢの前蓋が下に開くことになったことから、レンズを引き出して組上げて机の上に置くと、前蓋の厚みでカメラのレンズが上を向いてしまう。

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 この対策として、同じく前蓋が下に開く中判スーパーイコンタや35mmコンテッサなどでは、裏蓋に格納した金属の舌を引出して高さを稼いでいる。

 ビトーⅢでは、ボディの底に付けた金属板を開いて、まるで高下駄のように高さを調節して水平を確保している。

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 この場合、単なる金属板だけでは芸が無いと考えたのだろう、金属板には回転する小さな円盤にフィルムの有無を表示するメモアクセサリーが付けられているのはご愛嬌だ。

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● アクセサリーシュー
 ビトーⅢにはストロボを装着するアクセサリーシューがもともと装備してなく、必要に応じて別に用意された着脱式のシューを装着するようになっていたようだ。

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 この固体には、後付工作で別機種のシューが固定されており、実利的ではあるけれど、軍艦部の美観が損なわれているのが残念だ。


○ フォクトレンダー ビトーⅢ(前期) の仕様

〇仕様 ビトーⅢ 20170505-000

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〇 ビトーⅢの取扱説明書と宣伝広告
 
 英語版の取扱説明書の一部

〇取り説 ビトーⅢ 20170505-001
〇取り説 ビトーⅢ 20170505-002
〇取り説 ビトーⅢ 20170505-003
〇取り説 ビトーⅢ 20170505-004

 ビトーⅢの宣伝広告
 
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〇 ビトーⅢの撮影例(Ultron 50mm f2の写り)

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 近くの寺院の山門
 ウルトロン(Ultron)50mm f2

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 梅と石灯籠

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 名古屋市内中村公園の「日吉丸となかまたち」

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 名古屋市内中村公園の記念館の唐風玄関

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 高架ガードを過ぎる赤い名鉄電車

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 名古屋大須観音の本殿と観音噴水


 フォクトレンダーはビトーⅢを発売した1951年前後には、敗戦後のドイツの社会・経済の混乱を振り払うかのように、満を持して相次いで新開発の高性能ウルトロンレンズを装着した35mmプロミネントやビテッサなどの独創的で高品質のカメラも発売した。

 このとき、世界初の光学機メーカーである誇り高きフォクトレンダーは、自社の戦後復興の象徴としてこれらの新製品をラインアップしたことで、大きな高揚感に浸っていたに違いない。

 しかし、ビトーⅢに限ってみても、本来、小型・軽量(コンパクト)な35mm蛇腹カメラを目指したはずだったにもかかわらず、ただでさえ堅牢なダイキャストボディに、重量のある高性能レンズや連動距離計を装着し、大きなノブなどの操作パーツを組込んだことによって、他社の同系列カメラに比べて相当高価で重厚(650g)な高級カメラとなってしまっている。

 このため、当時のユーザーからは必ずしも多くの支持が得られたカメラではなかったようで、生産量も少なかったと見られるが、かえってそのことが、現在ではこのカメラの希少価値を高めているといわれる。










〇 今日の一献 セミサイズ蛇腹カメラ 第一光学のゼノビアC-Ⅱ型

――  高級品を目指した国内中堅メーカー 第一光学

 第一光学は戦前からテッサー型レンズを装着したワルタックス(Waltax 1940年)を生産してきた岡田光学精機から、戦後の1951年(昭和26年)に改称してカメラ製造を本格化し、最盛期には450名の従業員を擁し、自社でカメラ本体やレンズ・シャッターまで一貫生産する中堅メーカーだった。

 第一光学への改称に伴い、生産するカメラのブランド名もそれまでのワルタックスから「ゼノビア」へと変更された。

 このゼノビアC-Ⅱは、ゼノビアブランドの第1号機となった1951年発売のゼノビアC-Ⅰ型に次いで、装着するシャッターをセイコーシャ・ラピッドに変更したモデルとして、同年に発売されたもので、距離計を備えていないものの、岡田精機時代のワルタックスシリーズと同じようにテッサー型の自社製ヘスパーレンズを装着した高品位なカメラになっている。

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〇 ブログ原稿 ゼノビアⅡC
 
〇 レンズとシャッターの機構
 レンズは、前玉だけが単層コーティングだが、定評のあるテッサー型の自社製ヘスパー(Hesper Anastignmat)75mm F3.5(3群4枚)が付いている。
 ちなみに、ヘスパーとは英語で宵の明星・金星を意味し、またカメラのブランド名は、かつてローマ帝国時代に中近東のシリアにあった通商都市のパルミラ王国の女王、ゼノビアから名付けられたともいわれる。

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 シャッターは、ゼノビアC-Ⅰ型の自社製ダイイチ・ラピッドから定評のあるセイコーシャ・ラピッド(コダック式シンクロ接点付き)にバージョンアップされている。

 速度は B、1、1/2、1/5、1/10、1/25、1/50、1/100、1/250と最高速度が1/500秒で実用には十分だ。
 絞りは、f3.5、4、5.6、8、11、16、22まで。

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 第3群レンズはテッサーと同じく凹レンズと凸レンズの張り合わせとなっているが、コーティングはされていない。
 このヘスパーレンズの第3群第一レンズには、経年によるカビの発生などで曇りが出ていたので、表面を酸化ケイ素で磨いて除去した。

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 ピント合わせは、透視ファインダーを備えているが距離計を持たないから、被写体との距離を目測してレンズ鏡筒を回して前玉(第Ⅰ群レンズ)を前後させ、鏡筒に刻まれた距離数に合わせて行う。

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 セミ判(6x4.5cm)のフレーミングは、ガリレオ式透視ファインダーで行う。

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 ファインダーのある軍艦部には、ボティを構えた時の左に巻上げ用のノブがあり、右にレンズ絞りの被写界深度を刻んだアクセサリーノブがある。
 だから、フィルム室の右に装填した120ブローニーフィルムは、現代の35㎜カメラと違って右から左へ巻き取ることになる。
 
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 さらにシャッターレリーズがボディに付いている、いわゆるボディシャッターも軍艦部の左にあるから、撮影時には右手で保持しながらシャッターレリーズや巻取り操作も左手で行うことになる。
 
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 ノブ巻き上げのフィルム確認は、背面にある赤窓を開けておこなう。
お決まりの話だが、二重露出防止機構はないから、多重撮影をしてしまうことに注意を要する。
 なお、背面には第一光学の「D」のロゴが誇らしげに付いている。

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 前面に「ZENOBIA」のデボス加工がされた、皮の速写ケース。

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○ 第一光学のゼノビアC-Ⅱ型の仕様

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〇 ゼノビアC-Ⅱ型の取扱説明書と宣伝広告

 取扱説明書の一部

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 中村メイコ(女優)を使った、第一光学の宣伝広告

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〇 ゼノビアC-Ⅱ型の撮影例

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 名古屋中村にある太閤山常泉寺の境内
 Hesper Anastignmat(3群4枚玉)
 75mm f3.5

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 名古屋中村の常泉寺境内にある豊臣秀吉の像

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 名古屋市中村区地内

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 結婚式場の教会


 第一光学は、スプリングカメラや二眼レフカメラ、35mmカメラを製造し、当時の日本製品としては良質で、中堅メーカーとして評価されていたが、経営破綻し1955年3月になって工場閉鎖した。その後、ゼノビア光学(Zenobia Kogaku K.K. )に社名変更して操業を続けたものの、ついに1958年に再度破綻して消滅した。


● 参考 第一光学の二眼レフカメラ

  ○ 今日の一献 アルファベットの最後の名称 ゼノビアフレックスⅠ型
   ―― AからZまで、星の数ほどあった国産二眼レフメーカー 

     http://2011deko.blog.fc2.com/blog-entry-377.html






〇 今日の一献 旧ソ連の二眼レフカメラ LOMO LUBITEL 166 UNIVERSAL

―― トイ・カメラと決して侮れない 二眼レフの廉価・普及機シリーズ

 コンタックスのクローンのKiev、イコンタ似のモスクワ、ライカのコピーのフェド・ゾルキーなど旧ソ連時代のロシアカメラは、当時の精密光学器械先進国のドイツカメラを模倣したものが多い。

 ロシアカメラのLUBITELシリーズも、1330年代のドイツ・フォクトレンダーの二眼レフカメラ、ブリリアントをコピーしたもので、本家のブリリアントの変遷とともにモデルチェンジしてきた。

 このLUBITEL 166 UNIVERSAL(LUBITEL 166 U)は、かつてのソ連のレニングラード、現在のロシアのサンクト・ペテルブルグにあった光学機メーカーのLomography社が、1950年に初号機として発売した二眼レフ、LUBITELシリーズの改良機として1984年に発売されたものだ。

 初期のLUBITELは、本家のブリリアントと同じくボディがベークライト製の上下レンズが非連動のモデルだったが、LUBITEL 166 Uはプラスチック製となり、本家の後期型と同じく上下レンズが歯車で連動させてファインダーで焦点調節ができるが、そのボディデザインは本家のコピーから大きく乖離して進化?している。

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 LOMO LUBITEL 166 U
 1984年(昭和59年)8月から1996年まで、合計40万台が製造されたといわれる。

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 LOMO LUBITEL 166 Uと左はフォクトレンダー・ブリリアント後期型。
 LUBITEL 166 UNIVERSALの銘盤などは、それまでのLUBITELのキリル文字とは違って英字表示となっており、輸出向けだったともいわれる。


〇 歯車による焦点調節とレンズ
 テイクレンズとビューレンズを連動させるため、前面に大きな歯車が使われており、このカメラの風貌は他の2眼レフカメラと比べ、一風異なったスタイルとなっている。

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 歯車によるこうしたレンズ連動方式は、日本ではマミヤフレックス2型(1949年発売)やリコーフレックスIII(1950年発売)のフレックスシリーズにも見られ、ファインダーを覗きながら上のビューレンズの第一レンズだけを回転させながら前後させて焦点を合わせると、レンズ周りの歯車の噛み合わせで、下のテイクレンズの第一レンズも連動して回転して前後することにより合焦する。

 ビューレンズは、無銘の1群2枚玉レンズ、60mm f2.8で明るい。
 テイクレンズはトリプレット型(3枚玉)の単層コーテイングされたT-22レンズの75mm f 4.5が付いている。


〇 セルフタイマー付きシャッター
 シャッター速度は B、1/15、1/30、1/60、1/125、1/250秒のシャッターで、セルフタイマーが付いている。
 絞りは、f4.5、5.6、8、11、16、22。

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 向かって右下に、セルフタイマーのレバーかある。その下がシャッター速度変換レバーで、左下には絞りレバーがありそれらの数値の表示はテイクレンズの側面にまとめて印されており、分かりやすい。

 またシャッターのチャージレバーは左上にあるが、チャージは下にスライドしてすると、そのすぐ下にシャッターレバーがあるので、使い勝手は決してよくない。

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 ボディがプラスチック製で重量は540gと軽いから、撮影時にはカメラブレに注意しなければならない。


〇 フィルムの装填
 フィルムはブローニー(120)を使用し、画面サイズ 56×56mmとなっている。
 フィルムの装填は、背面上部にあるダイヤルを回してロックをはずし、裏蓋を開ける。

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 フィルム室の内側には光の乱反射防止するためのバッフアー枠などがないから、逆光撮影の場合にはフレアの発生に注意が必要となる。

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 ボディのノブを引きながら、フィルム室の下側にフィルムを取り付けてからフィルムを伸ばし、上側に空スプールを取り付け端を空スプールに入れる。
 
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 フィルム巻上げノブを回してフィルムを張り、次いで裏蓋を閉めロックしてから、背面の赤窓を開けて数字の1が出るまで巻き上げ、1が出れば赤窓を閉めて装填が完了となる。
 フィルム送りが、こうした赤窓確認式のカメラでは、二重撮影してしまうことに注意しなければならない。

 なお、赤窓は下にあるノブで開閉するが、フィルム室に仕切りプレートを設置して赤窓のプレートを回転させれば6×4.5cmのセミ判撮影ができる。

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 ピント合わせは、フードを立ててピントファインダーを見ながら下のテイクレンズを回して行うが、ピントスクリーンは本家ブリリアントと同じくコンデンサーレンズの中央をマット上にした部分で焦点調節するもので、付属のピントルーペをセットしてもすこぶる見にくく合わせづらい。

 また同じくファインダーは明るいもののケラレが大きく、視野率が小さくフレーミングに苦労する。

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 LUBITELの断面概念図 
 (LUBITEL-2のマニュアルから)

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 ファインダーフードの中央を押し開けて、フード背面の穴から覗けばスポーツファインダーとなる。

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 使用フィルムの感度などの備忘サインが書かれたアクセサリー。
 

〇 LOMO LUBITEL 166 Uの仕様

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〇 取扱説明書と構造図

 英文取扱説明書の一部

000-commiecameras-002のコピー

Lubitel166 manual01

Lubitel166 manual02

 ロシア語の構造説明図

○ Blog 資料 Lubitel166 20170425-1


〇 LUBITEL 166 Uの撮影例

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 高架線を走る新幹線
 T-22、3群3枚玉 75 mm、 f 4.5
 ASA160 1/250 F11

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 三重県鈴鹿市の『鈴鹿の森庭園』の枝垂れ梅
 ASA160 1/250 F11
 画面の端にはレンズの周辺光量の低下が見られる。
 
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 三重県鈴鹿市の『鈴鹿の森庭園』の枝垂れ梅
 ASA160 1/250 F11

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 三重県鈴鹿市の『鈴鹿の森庭園』
 ASA160 1/250 F8

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 上の画像からのトリミング画像
 トリプレットレンズとはいえ、ブローニーフィルムの画像の中心部分をトリミングすればその解像度は高く、実用に十分耐えられる。


 ところで、カメラの開発の歴史は、人の目で見たものをいかに忠実に効率よく写し撮ることに開発技術者が心血を注いできた歴史だったと思う。

 しかし近年では、操作ミスなどにより、時として予期せぬ一風変わった画像が得られる場合が多いことから、海外の芸術写真家と称する人々やアマチュアの一部でのチープなトイ・カメラへの人気の高まりを反映して日本でもトイ・カメラのブームがあるようで、LUBITELやHolgaといった廉価で簡便な、見た目にいかもチープそうなカメラが持て囃されるようになっている。

 こうした風潮の中で、「LUBITELは、そのプラスチック製のボディなどからチープなトイ・カメラに見えるけれど、ガラスレンズを付けた複数の絞りやシャッター速度を備えた立派なカメラだ。」との海外の好事家の意見もある決して侮れないカメラだ。

 

 今日の一献 35㎜距離計連動式コンパクト蛇腹カメラ コダック レチナⅡa

―― コンパクト35㎜カメラ『レチナ』シリーズの頂点を極めたカメラ

 ライカやコンタックスがレンズ交換式の35㎜システムカメラの開発を目指したのに対して、レチナは当初、折り畳みのできる古典的な蛇腹を利用した小型化による携帯性に優れたコンパクト化を目指したカメラだった。

 ドイツ語で目の網膜を意味する『レチナ(Retina)』ブランドのカメラは、パトローネ入りの35㎜フィルムを開発したアメリカ・イーストマンコダック社が、そのフィルムの普及を狙ってアウグスト・ナーゲル博士の経営するドイツ・ナーゲル社と合併して設立した「ドイツ・コダック社」によって、1934年に販売が開始されたオリジナルレチナと呼ばれる「タイプ117」から始まる。

そして、以後30年間という長期にわたって『レチナ』ブランド名で様々な形態の機種が開発され、最終機となった1964年発売の「レフレックスⅣ」まで続いた一連のカメラだった。

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 1934年に販売開始した最初機の「タイプ117」は、距離計がないモデル(Ⅰ系列・廉価版)で、距離計連動式モデル(Ⅱ系列)は1937年発売の「レチナⅡ」から始まるが、以降二つのモデルは並存しながらそれぞれ様々な改良が図られ進化していく。

 そこで高スペックの距離計連動式モデルのⅡ系列を辿ってみると、それまでフィルムがダイヤル巻き上げ式だったものが、1951年1月発売の「レチナⅡa」からレチナ式巻上げレバーとなり、シャッターチャージも連動して速写性を高め、『コンパクト・レチナ』シリーズの頂点を極める。(また、ストラップ金具もこの時から付いた。)

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 こののち、1954年の「レチナⅡc」とセレン式露出計を組込んだ「レチナⅢc」から、ボディはそれまでの直線を基調とした八角形のデザインから曲線を基調とした大きなデザインに変化し、重量も嵩むようになり、そのコンパクト性は失われていく。
さらに1958年発売の「レチナⅢC」では、標準レンズに加えて35mmF5.6と80mmF4のレンズが用意され、前群交換式のステムカメラへとスペックアップが図られるが、そのスタイルはグロテスクと言わざるをえないものとなる。

 そして1958年の「レチナⅢs」になって、レンズ交換時には、もはや邪魔でしかなくなっていた格納前蓋を取払い、それまでの『レチナ』の個性を特徴づけてきた蛇腹を放棄してデッケルマウントによるレンズ交換カメラとしたことで、「コンパクトカメラ『レチナ』」は終焉を迎える。

 しかし、その後も『レチナ』シリーズの開発は、シャッター優先AEを搭載する「オートマチック」へと進化していき、最後は時代の要請に応えるべくレンズシャッター式の一眼レフカメラ「レフレックス」にまで発展して終わる。


 したがって、ここで紹介する「レチナⅡa」は、「コンパクト35㎜カメラ『レチナ』シリーズのまさに頂点を極めたカメラ」だったとわたしは思う。

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〇 レンズとシャッターの機構
 レンズは、芯のある柔らかさと透明感のある繊細な描写が美しいとの評価のあった、ドイツ・シュナイダー(Schneider Kreuznach)社のクセノン(Xenon) 50mm の明るい f2.0(4群6枚構成のガウスタイプ)が付いている。

 シャッターは、後期型シンクロ・コンパー(SYNCHRO-COMPUR)で、ドイツ式シンクロ接点がMXレバー切換え式。
 
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 シャッターは、後期型シンクロコンパー(SYNCHRO-COMPUR)で、シンクロ接点がMX切換え式。

 なお、1951年1月発売の「レチナⅡa」のレンズは、前期型はクセノン50mmF2のみだったが、7月以降生産された後期型にはヘリゴン50mmF2付きが追加されている。シャッターは、前期型はX接点付きコンパーラピッドだったが、後期型にはMX接点付きシンクロコンパーとなっている。

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 速度ダイヤルは B、1、1/2、1/5、1/10、1/25、1/50、1/100、1/250、1/500秒。
 絞りは、f2、2.8、4、5.6、8、11、16まで。
 
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〇 焦点調節とフィルム巻上げ機構
 ピント合わせは、軍艦部の一眼式のレンジファインダーを覗きながら、鏡筒部にある焦点調節リングをレバーでスライドさせてレンズを前後させて行う。

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 ファインダーは明るく、ブライトフレームが浮かび上がっており、フレーム中央の二重像を重ねることでピント合わせを行う。
  
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 フィルムの巻き上げは、軍艦部の巻上げレバーを回して行う。 
 レバーの先にはローレットを刻んだ円盤が付いており、巻上げ操作がし易い。
 
 レバー巻上げでシャッターがチャージされる、優れたセルフコッキング機構を備える。
 フィルムカウンターは、逆算式となっている。

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 巻き戻しは、巻き上げレバーとシャッターボタンの間にあるボタンを押して逆転ロックを解除しながら、左の巻き戻しノブを回しながら巻き取る。
 この時代の巻戻し機構は、まだクランク式とはなっていない。

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 裏蓋の開閉は、左角にあるレバーを引き下ろしロックを外して行う。
35㎜フィルムのパトローネは左室内に装填し、フィルムは左から右へ移動し右にあるスプロケットで巻き取る。

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 そもそも『レチナ』は、アメリカ・イーストマンコダック社が開発した、一般大衆が使い易いパトローネ入りの35㎜フィルムを使うカメラとして開発された。

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 カメラの速写ケースは、上質な皮で作られている。


○ コダック「レチナⅡa」の仕様

○ Blog コダック レチナⅡa 20151203


〇 コダック「レチナⅡa」の取扱説明書と宣伝広告
 
 英語版の取扱説明書の一部

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 別バージョンのコダック「レチナⅡa」の取扱説明書の表紙(表裏)

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 コダック「レチナⅡa」の宣伝広告
 
● Blog 資料 コダックレチナ2a

 アメリカ・コダック社製品の宣伝広告
 
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〇 コダック「レチナⅡa」の撮影例

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 公園の森

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 JR名古屋駅の中央線ホーム

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 東海道二川の宿の本陣

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 東海道二川の宿(愛知県豊橋市)

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 JR名古屋高島屋のクリスマス飾り

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 小宅の庭の洋菊














〇 今日の一献 遅れてきた青年 ウエスターオートロール(Wester Autorol)

―― 最後発組のスプリングカメラ

 もう古い作家だが、大江健三郎の作品で『遅れてきた青年』(1962年)というのがある。
 地方の山村に生れ育った青年が、勇敢な兵士として死ぬはずの戦争に遅れ、60年安保闘争やポスト安保の安逸な時代精神にも遅れた、戦後世代共通の体験を描いた「遅れてきたものの自己弁護」の半自伝的小説だといわれる。

 ここで紹介するWester Autorolは、なぜかこの小説『遅れてきた青年』を彷彿させるカメラだ。

 このカメラのメーカーの西田光学工業は1936年に設立され、1950年代まで様々な規格のレンズやシャッターを専門に生産し当時の中小のスプリングカメラのメーカーへ供給する傍ら、戦中・戦後を通じて前玉回転式のセミ判(4.5×6)カメラの生産も行っていた。
 
 戦後もセミ判のSemi Westerや、6×6判のWester Chrome Sixを生産したが、1955年発売のSuper Westerから全群ヘリコイド二重像合致式連動距離計を備えた高級スプリングカメラの生産へと移行する。

 このWester Autorolは、全群ヘリコイド二重像合致式連動距離計を備え、その上フイルムの自動巻止め(セミオートマット)やカウンターの自動復元と二重撮影警告表示機構を追加した西田光学工業の最上級カメラとして1956年に発売された。

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 この会社が生産するカメラに付けられる「Wester」の名前の由来は、一般には西田光学工業の「西(West)」と「田(「ter)」から採用されたものとされているが、一方では「Wester」は英語で「(強い)西風、洋風」の意味があり、海外に輸出しても受け入れられやすいだろうとの目論見もあったと思う。


● レンズとシャッターの機構

 レンズは、自社製の単層コーティングされたトリプレットタイプ(3群3枚構成)の標準75mm f3.5のWESCON F.Cが付いている。

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 シャッターは、これも自社製のNKKプロンタータイプのセルフタイマー付きのシャッターで、シンクロ接点は普通のドイツ式接点。
速度は B、1~1/400秒。
 絞りは、f3.5、4、5.6、8、11、16、22。

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 撮影には、鏡筒の上にある小さいノブを下げてシャッターチャージしておいてから、本体の右側にあるバー(ボディシャッター)を下してシャッターを切る。


● 焦点調節とフィルム巻上げ機構

 梨地にクロームメッキが美しい軍幹部には、右に逆ガリレオ式透視ファインダーと左に採光ブライトフレームがあり、その間に誇らしげに赤地に銀色の「Autorol」の浮き出し文字がデザインされている。

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 ピント合わせは、一眼式のレンジファインダーを覗きながら、鏡筒上部にあるかまぼこ型の焦点調節レバーをスライドして鏡筒(レンズの全群)をヘリコイドで前後させて行う。

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 ファインダーは思ったよりも明るく、フレーム中央に黄色の四角いブライトフレームが浮かび上がっており、この二重像を重ねるピント合わせは容易だ。
  
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 ピント合わせは鏡筒部のヘリコイド(螺旋溝)を前後させて行う。
 レンズのピント合わせの方式は、レンズの前玉だけを回転させて前後移動してピントを合わせる前玉回転方式と、レンズの全て(全群)を前後移動してピントを合わせる方式がある。

 一般に前玉回転方式はレンズの繰出し量が2mmほどだから、鏡筒の周囲に目盛が付けやすく、距離計非連動の低価格カメラに多用されてきたが、距離計連動式の高級カメラでは、繰出し量が多い全群繰出し式が使われている。
 ただし、ドレーカイルによる距離計連動式の高級カメラであるスーパーイコンタだけは、前玉回転方式が採用されている。

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 鏡筒部の側面と蛇腹の繰り出し固定タスキ。
 タスキに西田光学工業の略称、NKKがプレスされている。

 フィルム装填は、他の120ブローニーフイルムを使うスプリングカメラと同じで、比較的に容易だ。
 フィルムは左から右へ移動するから、120ブローニーフイルムを左室内に装着し、フィルムの端を右の巻取りスプールに通して巻き取る。

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 フィルムの巻き上げは、軍艦部の右の大型ノブを回して行う。
 ノブに描かれた矢印の方向に回して装填したフィルムを巻いてゆけば、セミオートマット機構が働いて、背面のノブの下にある順算式フィルムカウンターが1で停止する。

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 撮影後に、軍艦部の背面のノブの下にあるレバーを横にスライドしてロックを解除してから、次のコマへと巻き進めると、カウンターが2で自動停止する。最終コマ数12を撮影後は、そのまま最後まで巻き取り、裏蓋を開けてフィルムを取り出す。

 二重露出防止装置は付いていないが、シャッターを押して撮影すれば、ファインダーの中に赤の印が出て、二重露出の防止を警告してくれる。
 この印しは、ノブを回してフィルムを巻き取れば、解除されて消える。

 規格が同じで転用したからだろうか、裏蓋の背面のグッダペルカには、前のモデルのWester Sixの文字が入っている。

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 軍艦部の上部には、大きな簡易露出表が付けられている。
 距離計連動ファインダーが大きく軍艦部が広くなったから、こうした設計をしたのに違いないが、これを美観が損なわれると観るか、親切設計で好感を持つかだが、、、。
 たまにドイツカメラで見かけるのだが、わたしには邪魔なものにしか思えない。
 
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 蛇腹を折りたたんで鏡筒部を格納すれば、コンパクトになるのがスプリングカメラの一番のメリットだ。

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 カメラの鏡筒格納部の蓋上部にあるボタンを横に押すと、スプリングの力で折り畳み式の蛇腹が自動起立して撮影状態に組上がる。

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 60年経過した今でも立派に通用する、しゃれたデザインの革ケース。

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 西田光学工業は、Wester Chrome Six Rにはオリンパスの高級ズイコーレンズを付けて競合他社との差別化を狙ったり、1956年(昭和31年)にこの最上級スペックのWester Autorolを発売したりして経営の挽回を図った。

 しかし、このころにはすでに同程度のスペックを備え、高級レンズを装着した有名メーカーのマミヤ6-I型(1940年)やスーパーフジカ6(1955年)などが発売されており、トリプレットのレンズで低価格路線を狙ったものの、時代は35㎜フイルムカメラへと進んでいる時期でもあって、もはや最後発組の遅れてきた青年だったことは否めなかった。

 さらに末期には、レンズやシャッターのスペックダウンの低価格機種を発売したり、35mmレンジフアインダーカメラAuto Westなどの生産にも進出するなど、短期間に様々な対応策を講じたものの、折からのカメラメーカーの厳しい淘汰の波には抗いきれず、ついに1958年1月に倒産した。


● Wester Autorolの仕様

○ Blog wester autorol  20160200


● Wester Autorolの取扱説明書と宣伝広告
 
  Wester Autorolの取扱説明書の一部

● WESTER AUTOROL-01

● WESTER AUTOROL-02

● WESTER AUTOROL-03

  Super Westerの宣伝広告
  (Wester Autorolの広告が見つからないので、とりあえず代用で。)

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● 撮影例

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 早春の梅の花
 Kodak Ektar100
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 早春の梅の花
 1/200sec f11

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 村社 六所社の佇まい
 1/200sec f11

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 新幹線がスピードを上げる区間
 1/400sec f8

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 名古屋市営地下鉄の車内
 1/100sec f3.5

















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